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インタビュー

コミュニケーションが 人を助け自分を助ける 後編

今回も引き続き所さんに介護業界への期待と希望などについてお話を伺いました。

いきいき:では、介護業界で気になること。もっとこうすれば…ということがあればお聞かせくださいますか。
所 さん:高齢者が増え、介護保険制度が導入されましたけれど、当初は”夢ある介護業界”と言いますか、国民みんなで支え合いましょう。と、始まりました。「おじいちゃんやおばあちゃんが好きだから、介護の仕事をしたい」と、沢山夢を持って勉強し働きに来た子達がいっぱいいたんです。ところが、介護保険制度の歪みでしょうか?お給料が本当に上がらないんです。
仕事は楽しい事ばかりではなく辛いこともあります。頑張っても報酬に繋がらないのです。介護の仕事に”夢と希望”を持っていた若い子達が何人も介護を離れて行く姿を見ました。介護に対する思いのある方が、働きやすい環境があると良いですね。そのほか、ここ最近思うのは職業訓練コースで、無料でヘルパーの資格が取れますね。とても良い仕組みと思うのですが、本当にこの仕事につきたくて資格を取りに行くのなら良いけど、仕方なく行こうか…と思う方も中にはいらっしゃるので残念です。
私たちが一生懸命携わってきた介護の仕事が、「今は仕事がないんだから介護の仕事にしなさい」と言われているようで…私が、きちんと理解していないせいかもしれませんがとても気になるし嫌ですね。ただ、私もそうでしたが、仕方なく仕事についた人でも周囲の人の影響によってやりがいを持って働けるようになると思っているので、そのような支援はしたいと思いますし、頑張ってほしいですね。
また、介護報酬も今年はすごく下がりましたし、大ダメージですよね。人件費は負担が大きいので上げられないっていうのも分かるのですが、別の方法がないものかなと思います。今、処遇改善加算などありますけれど、制度改正ごとに変化するものなので不安定です。無くしますよと言われれば無くなるものなので、基本的なところを考えるとかしてほしいですよね。
今、施設やグループホーム、サ高住、有料老人ホーム等沢山あります。特別養護老人ホームを開いても1ユニット(ユニットとは介護を行うシステム上の小規模生活の単位)開けないとか、そこで働く人がいなくなっているっていうことがこの業界の気になることです。その他に、最近耳にして「?」と思ったことが、デイサービスや施設で働いていて「仕事がきついし、給料が安いからケアマネジャーの資格を取るんだ」っていう話を聞くんです。ケアマネジャーになると現場から離れてかつ給料も良いと言われているみたいですが、楽な仕事ではないですし、現場と違った苦労が沢山あります。「現場が嫌だからケアマネジャーになる」って考え方に違和感を持ってしまいましたね。だめだとは言わないですが、資格は介護等に携わると5年で取得することができますから、スキルアップや自分の将来を考え資格を取り、高齢者の介護に取り組んでほしいと思います。
いきいき:どうすればそれらの問題を解決できるんでしょうか
所 さん:難しいですね。思うんですけれど経営者は職員に対して、「お給料はこれだけしか出せないけれどよく頑張ってるね」っと言う言葉やご褒美!働いている人達が「お給料少ないけど働き甲斐がある」ですとか、なにかそう思えるような環境を作って行かなければダメじゃないかと思うんです。今後、介護報酬の大幅なアップは考えられないので、そのような中でどうして経営していくのか?と、考えると、個々の経営者がいかに自分の事業所を良くして、もっと利用者様に来てもらうようにするとか、もっと職員が働きやすい環境にするとか、ソフトの面をちょっと改善していけるといいのかなと思いますね。人と人が育てあう環境、アドバイスを受け入れられる環境、介護に対する思いがきちんとしている経営者の元には心ある人材が集まると思っています。なんかまとまりがないですね。(笑)
いきいき:しかしまさにそういう所を改善していかないと今後の介護業界の未来は危ういですよね。
所 さん:最近、沢山の施設が建ちましたよね。2025年問題(団塊世代の方達が後期高齢者になる年)の後、私達が介護される年齢になる頃は、人口が減っていきますよね。そうすると、建物は古くなって住む人もいなくて…どうなるんだろう?って気になります。

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いきいき:ではお仕事をされていて、うれしかったこと、つらかったことはりますか
所 さん:つらかったことは、介護職員になった頃、理由はわからないですが陰口を言われました。キャディーの時もそうでしたけれど、私のどこかに問題があったのでしょうね。辛かったですね。家に帰って夕食の支度をしながら泣いてるんです。そのままだったら病気になっていたかもしれません。でも、子どもの為、自分の為「負けない」って頑張りました。あと、やっと居宅の仕事に慣れてきた頃、仕事を辞めようと思ったことが一回あります。ご本人と奥様から依頼されてサービス提供の手配をしたのですが、途中から介護にかかわりを持ち出した息子さんが”業者とお前はつるんでいるんだろう”と、思い込み高圧的に怒鳴るんです。
いきいき:最初から信用していない様な感じなんですね
所 さん:そうですね。奥様から住宅改修とかもお願いされ、決まった業者も特にいらっしゃらないと言うので、信頼できる業者を紹介したのですけど、”マージンを貰っているんだろう”という疑いの目をむけられたり「俺の知っている奴に頼むともっと安くできた」とか言うんです。奥様は息子が言うと、何も言葉をはさまず、私たちが息子さんにいろいろ言われているところを見ているだけで、居なくなると謝る。家庭的に問題のある家庭で、尚且つ息子さんも問題のある方だとは後で伺いましたが、たった二ヶ月しかそちらのお宅にはかかわっていないのに、自信喪失(もともと自信はありませんが)この仕事を続けるのは無理だと思いました。
いきいき:その利用者様と奥様のために一生懸命やっていたことなのに…
所 さん:そうなんですよ。かかわりを持つ方はどちらかと言えば皆様、良い方で気も合いますし、自分の気持ちや態度、心の持ち方が反映されると思い仕事に向き合っているのですが、どうにもならない方もいるんだと気づきました。ここでも学ばせていただきましたね。つらいことと言えばそのくらいでしょうか。あ…パソコンに向かって仕事をする時間が長くなると肩こりがつらいですね(笑)
うれしかったことは、本当にいろいろな方と知り合えるのがすごく楽しいし、うれしいです。利用者様やご家族様はもちろん、サービス事業所の方ですとか、お医者様、看護師さん、理学療法士さん等。いろんなやり取りがあって、それがすごく楽しいし、そこを通して利用者さんとの話が盛り上がって楽しいですね。あと、亡くなった方に対してうれしかったって言うのはおかしな話ですが「在宅で看取ろう」と決めた時、お医者さま、看護師さん、福祉用具の方や、ヘルパーさん、かかわる方みんなで本人の為、ご家族の為と最善の方法を模索しながら見送りできた時は、泣けますが、達成感です。ご家族から「家で看取れてよかった」って言われることがとっても嬉しかったですね。
いきいき:大変ですけれど、貴重な体験ですよね。
「いきいき60+」については、どのような感想がありますか?
所 さん:サ高住の案内は沢山来るんですが、あまりにも沢山ありすぎて、利用者様から相談があっても、どこを紹介してよいかわからない時に拝見しています。私の担当する利用者様が入居している有料老人ホームの記事もありますし、事業所様の介護に対する考え方や事情もわかって安心ですよね。私は今まで自分で行ったり、既に利用者様が入居しているところしか紹介したことがなかったんですけれど、「いきいき60+」を見ると紹介しやすいですよね。あと、もう少しサ高住も安価であればよいですね。このお話は気になることの部類になってしまうかもしれないですが、国民年金の年金額では残念ながら、なかなかサ高住には入居できないですね。皆が皆、高所得の方ばかりではないですし、国民年金でぎりぎりで生活されている方も沢山いらっしゃいます。そういう方達が入居できるような場所が欲しいと思いますね。
いきいき:では、最後に、プライベートの時間の過ごし方をお聞かせください。
所 さん:私、すごく多趣味です。回遊魚のようだと言われるんですけれど(笑)ここ最近では三線です。去年から一か月に1回三線の先生をお招きして教えていただいています。 友達にギターやピアノが上手な人がいるんです。私もギターもピアノも触れたことあるんですが、上手に引けない。本当はギターを弾きたいんですけど、指が短くて、三本の線(弦)ならなんとかなるんじゃないかと思い(笑)まして。甘かったですが…。三線の音色が優しく、心が癒されました。まだ、そんなに弾けないです。練習沢山しないとならないです。三線の仲間に「本気の英語塾」って、英語の先生がいらっしゃったので英語も習い始めました。いつになったら英語が話せるのか?記憶力も低下してるので、気の長い話です。ボウリングやパークゴルフ等、体を動かすことも好きで、いくつになっても仲間とワイワイ楽しみながら活動できるとよいと思います。
いきいき:本当に多趣味ですね、驚きました。
では、そろそろインタビューを終わりたいと思います。所さん、今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。
    
所 さん:こちらこそ、どうもありがとうございました。

”人が好き”とおっしゃる所さん。人と人の間にはどれほと”コミュニケーション”が大切なのか教えていただきました。お忙しい中ありがとうございました。

所輝美

社会福祉法人函館共愛会 指定居宅介護支援事業所入船
介護支援専門員/介護福祉士/社会福祉士/精神保健福祉士

所輝美

北斗市生まれ、函館育ち。保母として社会人のスタートを切るが出産をのため休職。子育てをしながら復帰の準備を進める間ヤクルトレディーとして販売業に携わる。その時に出会ったお客様との会話がキッカケとなり介護・福祉の道へ転職を遂げ、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取得し介護業界20年となる。休日は、三線、英会話、歌を歌う、パークゴルフなど多趣味で活発なご様子。日々、コミュニケーションと人との繋がりを信念にご活躍中。

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