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良いスパイラルで繋がる<前編>

今回は地域包括支援センターこん、副センター長の長谷山さんにお話を伺いました。

    
いきいき:最初に長谷山さんの普段のお仕事の内容を教えてください。
    
長谷山さん:「地域包括支援センターこん」で副センター長と社会福祉士として勤務しています。総合相談や、権利擁護業務が主な内容です。つまり高齢者の方の権利を守り、高齢者の虐待や最近多い消費者被害への対応です。被害に遭った高齢者の方にアプローチして支援していくのがメインの仕事です。
    
いきいき:各メディアから注意喚起もされていますが、消費者被害の件数はそれでも減少しないのでしょうか。
    
長谷山さん:数年前と比べると多いです。業者もあの手この手を使ってアプローチしてきますし、高齢者の方の独り暮らしが増えていますから、不利益を被るのは多くなっていると思いますね。
    
いきいき:では被害に遭った方や、遭いそうになった方達が相談に来られるんですね
    
長谷山さん:そうですね、もしだまされた場合には、函館駅前に消費者センターがありますし、弁護士さんや様々な関係機関と連携しながら解決方法を考えています。仕事以外での活動としては、社会福祉士会の立場で後見人の活動をやらせてもらったり、社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格試験を受ける方達の受験対策などをやっています。セミナーの多くは札幌なので函館で開催できるよう段取りをしています。あとは、成年後見制度の関連です。弁護士、司法書士、社会福祉士などがパンフレットなどによく取り上げられていますが、社会福祉士会の立場で後見人の活動をやらせてもらったり、社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャーなどの資格試験を受ける方達の受験対策等です。
    
いきいき:資格を取得された方などの業界への就業割合はどれぐらいなんでしょうか。
    
長谷山さん:人材的には不足しているので割合は低いと思います。函館は医療と福祉の産業が多く高齢者率も高いですから、分母に対する分子がどうやってもかみ合わない中、施設はどんどん建っていきますから、業界でも人材の取り合いです。
私は福祉業界に入って17年目ですが、この仕事を始めた頃は福祉の募集はほぼありませんでした。福祉業界で働きたいと思っても募集自体がないので働けなかったんです。その時代から今を比べると今は逆転現象です、働く人が「何処の施設で働こうか?」って感じです。
    
いきいき:働くことになったきっかけを教えてください。

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長谷山さん:私は商業高校を卒業したんですが、卒業の時に進学も就職も決められないまま、単位もぎりぎりでしたが卒業させてもらいました。卒業後3月~5月の間なにもせずに友達と遊び歩いていていたんですが、友人とハローワークに行って、求人を検索したら、たまたま高齢者福祉施設の求人がでていて応募してみたんですよ。すごくこの仕事がやりたいというわけではなかったんですけど、採用してくださいました。1年間働いてお金を貯めて、パソコンや簿記を勉強したくて札幌の専門学校に行こうと思っていたんですけど、いざ働いてみると仕事が面白くて、数年働いて臨床福祉専門学校に社会人入学をしたんです。前回インタビューを受けていた有川さんと同級生で、学校を卒業したときに、ここに拾ってもらいました。ですので始めは福祉業界で働こうとは思っていなかったんですが、実際にやってみたら面白かったんです。「深いなー」って思いました。
    
いきいき:たしかに、人と対する時は相手もさまざまでマニュアル通りにいかない事がほとんど。でもそれがどんどん面白くなってくるとおっしゃる方が多いですね。
    
長谷山さん:はい、十人いれば十人違います。この人の時はこの接し方でうまくコミュニケーションできたけれど、別の人ではダメだった。じゃどうすればいいんだろうと考えるのが楽しかったのかもしれません。
    
いきいき:では次にこの業界で気になっている事がありましたらお話をお聞かせていただけますか?
    
長谷山さん:やはり業界で気になるのは、ありきたりですけど”人材不足”ですよね。これからもっともっと高齢者が増える世の中になってきて、今まで以上に福祉の専門職が重要になってくると思うんですよ。なので人材の確保をどうするかと考えると自分の病院とか施設ではなくて、もう町全体ですよね。施設が何か所も建って、介護職員が100人も200人も必要なのに、例えば臨床福祉専門学校では専門職として卒業していった人達がその10分の1(20人)しかいない、それでも高齢者の方達は施設を必要としているので、どんどん建っていく。でも毎年福祉を担う専門職の学生が20人とか、バランスが悪いですよね。”もっとこうしたら”の質問には、勝手な考えなんですけど、福祉職とか介護職の職種で働いている人に別枠で補助金などを出せればもっと魅力が出て、「やっていきたい」「やってみよう」と考える人が出てくるんじゃないかと思うんです。ただ”介護の仕事をやりますから月1万円会社のお給料とは別に行政から補助金出しますよ”だけじゃなくて、補助金を出して給付する代わりに給付を受ける人は行政等が主催する介護の研修会などにきちんと出席して単位を取る。研修会では高齢者虐待の防止や、より良い介護とはなんだろうという事を勉強すると、介護職員はお金ももらえるし、研修を受講することによって自分の知識も増える。行政としては給付金を出すけれど結果的に函館市の街の福祉施設レベルが上がって行く仕組みをうまくつくれると、もっともっと介護や福祉の専門職としても世間からの見え方も変わるのかなと思います。介護業界だけに限らずどの業種も若い人材は取り合いじゃないですか。何かうまくまわる仕組みを作っていかないとこのままでは増える高齢者の数に対応できないですよね。
    
いきいき:函館では今後も高齢化が進むでしょうから、そういう状況を考えると本当に人材不足は大きな問題だと思います。
    
長谷山さん:そうです。気になります。確かに人材不足なんですが、いかに若い人達に福祉とか介護に魅力を感じてもらえるようにするかを、今我々がやっている専門職世代がみんなで考えないといけないんです。今働いている我々がもっと地域や若い世代に「福祉の仕事はこのような仕事なんですよ」と見て理解してもらえるような仕事をしていかないと、若い人たちには「介護はじいちゃんばあちゃんのお世話」「私は人の世話なんてできないから福祉は無理」ではなく、それ以外にも魅力のある働き方ができることを、今の現役世代が地域に発信していく方法を考えなければいけない。それは我々なんだと思います。
    
いきいき:「介護」という単語だけを耳にしても具体的な内容は若い人達にはイメージしにくいですよね。

次回は引き続き長谷山さんに、お仕事をされていて、うれしかったことや悲しかった事などをお伺いしたいと思います。

長谷山哲平

高齢者あんしん相談窓口 地域包括支援センターこん
副センター長・社会福祉士・精神保健福祉士/

長谷山哲平

静岡県生まれ、北斗市育ち。現在地域包括支援センターこんの副センター長を務める。学生の頃、商業系の専門学校へ進学する学費を稼ぐため1年間限定で、まだ当時では少なかった福祉関係のアルバイトを始めるが、実際に仕事を始めると、人との関わりの面白さ、この仕事の奥深さを知ることになる。この時の経験が業界に入るキッカケとなり。今では会社からの応援があって様々な勉強ができて感謝しているとおっしゃる長谷山さん。介護福祉士試験対策の講師も勤め、後身の育成にも力を注ぎ日々ご活躍中。

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