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インタビュー

ここに相談して良かったと思えるように(後編)

今回も引き続き有川さんに業界で今、気になることなどについてお話を伺いました。

いきいき:介護業界で気になること、こうなれば良いのにと思うはありますか。
    
有川さん:夢みたいなお話でもいいですか?
介護保険制度が2000年から始まって「措置」から「契約」という形に変わって利用者の意思が尊重される形に変わったことは本当に良いことだと思います。でもその反面介護業界のほとんどが介護保険料として集まった財源で、国でもそれらの財源を充てたり補填したりしていますよね、限られた財源に対してたくさん事業者が出てくると、限られたものが複数に分配されるとどうしてもお客様の取り合いになるので、上限は決まってしまいます。売上的にも利益が出せないわけではないと思いますけど、その決められた財源の中で給料をやりくりするようになるとやはりそこで働く方々の人件費も当然上限がでてくると思うんです。
もしこの業界で能力主義者の人が働いているとして能力を活かして利益を追求したとしてもなかなか能力の部分は給料に反映されないことになりますよね。そこの部分のシステムづくりを国ではどのように考えているのかが知りたい所ですし、利益を追求した人にもっと恩恵があるようなシステムになってくれたら一人一人の業務に対するポテンシャルにも影響してくるんじゃないかと思うんです。
    
いきいき:世間では介護業界で働く人がいないといいますし、仕事に対して良いイメージを持たない方々も多いように聞きます。頑張ればそれが認められるとなればそこで頑張ってみようという人もでてくるかもしれませんね。
    
有川さん:デイサービスやヘルパーの事業所の方などは給料が低くて、今その低さを補填するために介護職員職改善交付金等を行っていますよね。職員の生活の質を底上げするためや職員の生活を守るためと言うのもわかるんですが、能力主義の視点で考えると頑張っていても頑張らなくても評価は同じように見えます。それがいいか悪いかはわかりませんが、やはり気になるところかな思います。
いきいき:利益を追求する運営はバランス感覚がとても大切になりますよね。
    
有川さん:そうです、お客さんを集めることばかりに必死になって内容がついてこないような所も出てくるでしょう。やはりそこは運営母体が質の底上げをどうするかを考えていかないといけないですね。どんどん働く方々のモチベーションが上がって、より良いものになって行くとおのずと質の高い物が求められて行くようなことになるのかなと思います。
そんな考えもあってもいいんじゃないかと思います。

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いきいき:より良くして行こうと試行錯誤することが、新たなサービスが生まれるキッカケになりますからね。
    
有川さん:その他、気になるのは包括支援センターの分野で言うと町会や地域のありかたが今後どのようになって行くのか、国の方では地域包括ケアシステムの構築が目指されているなかで、私達もそれを構築できるように活動して行こうと思っているんですけど、やはり地域住民、地域の関係者の考え方がまだそこの域まで達していないと思うんです。国は「地域包括ケア、地域で一人一人を支えて行きましょう」と言う考えになっているんですけど、どうしても地域の関係者にしてみると「自分達も高齢者に入っているんだけど、自分たちにまだ何かしろと言うのか?」と言う意識が強いのかなと思う人もいますし、変えて行くにはその方々の代だけで考えてるとおそらくマイナスのイメージにしかならないので、その次の担い手つまり子供たちにも今のうちから福祉についても勉強をしてもらって、介護もそうですけど、町会がなにをやっているのかもわからないと思うので町会の活動が見える状況を作ったり、少しでも子供たちが関心を持って町会はやはり必要なんだと思えるような仕組みができると、もっと町会の役員などを頼まれたときに受けてくれる方々も当然出てくるかもしれませんし、うまく運営できるシステムや参加しやすい環境を求められるのかなと思います。
いきいき:私が子供の頃は町会の行うイベントなどには、町会を意識することなく参加してましたが、大人になるにしたがって足が遠のいていきました。
    
有川さん:旭町の町会も昔は玄関を開けていて毎日のように出入りがあって、公文式やそろばん教室などいろいろ活動していたみたいなんです。今は全然なくて私達が健康教室で使う時に町会館の隣のお家の町会役員の方から鍵を借りて教室が終われば返しに行くんです。その当時と今の違いがなんなのかと考えると、昔はそこに住み込みの方がいらっしゃったらしいです。役割の担い手がいなくなったとか、そういう理由だと思うんです。ただ、いまの町会も町会費を払ってくれている人ばかりではないですから、「そこまで町会で対応しなければいけないのか」と言う感じにもなるので、その町会の垣根は越えなければならないけれど「地域をもっと活性化させるには貴方たちの協力も必要なんです」と言って行かなければならないと思うんですよ。このあたりが包括支援センターをやっているなかで気になる所ですね。
いきいき:では、お仕事をされていてうれしかった、もしくは悲しかったことはありますか。
    
有川さん:楽しい(うれしい)ことといいますとやはり利用者さんから「ありがとう」とか、「あなたに相談して良かった」と言われると、その人のために頑張って良かったって素直にうれしいですね。包括の業務をやっていて、基本はやはり個別のケースだと思うんです。個別のケースなくして地域は語れないと思うので、ありがとうって一言言われると次の業務も頑張れるし励みにもなりますよね。そういったときはやはりうれしいです。
あとは、辛いことと言っても、私は仕事で辛いと思ったことが無いんですね。本当に今の仕事が好きなんです。ですから仕事の中身と言うよりも、利用者さんとの人間関係の方でしょうか。それこそ初めにお話しましたけど「見守りネットワーク事業」でもいきなりアポなしで本人の所にいくんですよね。そういった時に受け入れてもらえればいいんですけれど、「だれだっ!」て怒鳴りつけられる時もあるんです。そういったときはやはり落ち込みますよね。見ず知らずの人がいきなり来て話聞きたいんですけどって言われたって、相手も「おまえだれた!」ってのも当然なのかもしれないですけど、そうなった時にまだ包括支援センターのことを知らない人もたくさんいるんだなって、私達の周知不足だなって、じゃあもっとこの方々にもわかるように活動を伝えて行くにはどのようにしたらいいだろうと考えるようになりましたね。
いきいき:自分の意思や意図がうまく伝わらずに誤解されてしまった時はやはりつらいですよね。
では、このいきいき60+に関して、どの様な感想をお持ちですか。
    
有川さん:この間ホームページを見させてもらったんです。サ高住のことを取り上げられてるんですね。サ高住のことも我々の中でどこかいいサ高住ないだろうかって聞かれることも多いんです。ですからそういった時のための社会資源として私は知ることができたので良かったと思ってますし、これからも活用させてもらえればと思います。
いきいき:ありがとうございます。お役に立てるよう頑張ります。
では最後にお休み等プライベートのお時間はどのように過ごされていますか。
    
有川さん:私の趣味でもあるんですけど料理を作るのが好きなんです。子守をしながら夜はほとんど料理をしています。レシピサイトを見ながらもするんですけど自分でも創作といいますかアレンジしてみたりとかしてやってますね。自分の中でのポリシーみたいなものなんですけど、高い食材を使って高い物を作っても、おいしいのは当たり前だし、いかに普通の食材を使っておいしい物を作れるかってところが腕の見せ所なので、できるだけ食材も手ごろに入るもので、そんなに難しくなく作るようにしています。それが普段の趣味でいうと凝っている趣味ですね。
いきいき:昔から料理はされるんですか?
    
有川さん:一人暮らしも長かったですし、学生時代や独身の時も結構自分で作ってました。小さいころから親の調理を手伝わされたりしてたこともあって、料理をする姿を見ていたので、手際よくできるし、自分でうまくできるとまた次に繋がります。これも仕事のケースと同じで、うまく行くと何でも次も頑張ろうと言う気持ちになるのでそのあたりは同じかなと感じます。
あと、調理以外にも家事、掃除などもやりますからこの仕事をやってなかったら、もしかしたら私がヘルパーをやっていてもおかしくない位やってます。
やはり馴れだとは思うんですけど何回もこなして味も前と変えてみるとかは経験がものを言うのかなと思います。最近は共働きが多いですから奥さんの手伝いをする旦那さんも増えてきてると言うことは聞いたことありますけど、私の場合は奥さんの手伝いよりも自分がやりたい事をやって、それが奥さんの手伝いになっていたというパターンなので、奥さんにしてみると好きなことを私がやってるんだからいいでしょって所もあるんでしょうね。仕事も自分の好きなことをさせてもらって、プライベートも好きなことをさせてもらってほんとに満足してます。「仕事を楽しくやらせてもらっている」というのが家庭でもいい状況につながっているのかなと思いますね。お互いに家庭のことがうまくいっているから仕事にも影響しないし、仕事がうまくいっているから家庭にも影響しないという状況。どちらかのバランスが崩れると両方に影響を与えたりと言うのもあるでしょうから充実はしてます。掃除をしてきれいになると気持ちいいじゃないですか、自分のためになるじゃないですか。料理しておいしいもの食べると自分のためになるじゃないですか。だから基本的に自分のためになることなんですよね。これもきっと考え方だと思うんですけど、プラスに考えるかマイナスに考えるかだと思うので、掃除もやらされてると思ってやっても多分面白くないでしょうし、積極的にやって汚れがきれいになったと言うことだけでも感じ取れれば次にまた繋がると思うんです。
いきいき:有川さん。今日は本当に長い時間ありがとうございました。そろそろインタビューを終わりたいと思います。
    
有川さん:こちらこそ、ありがとうございました。

人との繋がりが希薄になっている昨今、介護の事、地域の事、一人で抱え込まずに一度地域包括支援センターで相談してみてはいかがでしょうか。
有川さんお忙しいところ長時間本当にありがとうございました。

有川祐樹

高齢者あんしん相談窓口 地域包括支援センター
センター長・社会福祉士・精神保健福祉士/

有川祐樹

九州生まれ、憧れの地北海道の大学に進学し定住。自動車販売ディーラーに就職するが、友人の誘いでボランティア活動を始める。その時の経験が介護福祉業界への転身のキッカケとなり、相談員などの職種を経て現在地域包括支援センターあさひのセンター長を務める。仕事終わりや休日はオリジナル料理に腕を振るい、「仕事も家事も自分の好きなことをやらせてもらって満足」とおっしゃる有川さん。プラス思考で地域の活性化と介護福祉への取り組みに日々ご活躍中。

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