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インタビュー

頂上のない山を登る人 受け継ぐ人<後編>

今回も引き続き秋野さんにこの業界で気になることや、今後の展望などをお聞きしました。

    
いきいき:では介護業界で気になっていることや、こうなったらいいなと思う事がありましたらお聞かせください。
    
秋野さん:ケアマネジャーの資格というのは、実務経験5年を経て初めて受験ができるんです。若い世代の職員は当社にもたくさんいますが、最近はケアマネジャーの資格を取りたいと言う方に出会う機会が少なくなりました。私たちの責任というと大げさかもしれませんが、介護・福祉に関する広報活動が不足しているなと感じてしまいます。
今までは、ヘルパーさんなど直接介護をする方でもケアマネジャーの受験ができたんですけど、これからは変わりますよっていうことになっているので、受け入れ全体が縮小していく中で若い人の力はもっともっと必要になってくると思うんですよ。これは受験資格を緩和しようと言う話ではないんですけれどね。
    
いきいき:最低5年はかかるんですね。
    
秋野さん:たまたま私は別の路線からこの世界に入りましたけど、最初はいろいろな人に迷惑をかけたと思うんです。
普段の業務や制度をきちんと理解するには結構な年月が必要なんだと思うんです。長さだけではなくて中身の濃さもあると思いますけれど、それを試験で選抜するのは難しいですから、5年やっていればとりあえずはわかっているでしょうというラインなんだと思います。
数年前はケアマネジャーの仕事をやりたいという方もいらっしゃった気がするんですけれどね。なかなか大変な仕事だと思いますし、でもその分得られるものもたくさんあるなと思って私は仕事をしています。もう少しこの仕事の魅力を伝えるアプローチを私たちからしていかないといけない気がしています。
    
いきいき:ヘルパーやケアマネジャーのなり手がいないのが問題になっていますが、これ以外には何かありますか?
    
秋野さん:ケアマネジャー単体で見ても、介護業界で見ても、人材が枯渇ぎみです。
「介護=低賃金」だと皆さん思っていらっしゃると思うんです。実際否定できない面もあると思います。施設のスタッフさんは人の命を扱うのに、他の業種と比べて高いことはまず少ないですし、良くて同じ位かそれを下回っているんです。これは人ひとりに入ってくる収入上限が見えてしまってるので、定員があって、ある程度ここまで埋まっているので「じゃあこの人たちのお給料を毎年上げましょう」では経営者からしてみれば難しいです。なので国でも何か対策を考えてほしいです。
これからの時代、団塊の世代が後期高齢者になる時代に向けて。今までのようにこの制度を続けるために「ここでお金を減らします」ってどんどん切り捨てていったら何も残らないのでは?と思い危惧するところなんです。何か根本的なところで変えて行かないと。それが何か?なんだ?って言われるとちょっとすぐには答えられないですけどね。
やっぱり絞られるのはだれも良い印象を受けないですよね。今までできたのに、できなくなりましたというのも印象としては最悪なので。ひどいときには、「あんたになったからこれができなくなった」って言われたりすると心苦しくなります。それは制度の関係なんだけどなって思ったりしますが、それをご理解いただくのは難しいかもしれません。特に包括センターでは多いかもしれないですね。要介護から要支援になってサービスの絶対量が減って、担当がもともとのケアマネジャーさんから包括になってあんたが担当になったらヘルパーさんの回数が減らされたなんていわれたら困りますよね。

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いきいき:利用者さんにはなかなか説明してもご納得いただけるかどうかわからないですよね。
    
秋野さん:箱ものは作る時代ではないかもしれませんね。実際に最期は家で暮らしたい利用者さんの願いがある以上、それに向かって行くのはもちろんいいことだと思います。それは家族との関係も含めて全員が全員に当てはまるわけではないと思っていて、そこは一人一人をうまく按分できるような制度が大事かなと思います。そういった意味ではサ高住はこれからもっと需要が増えてくるかなと思います。箱ものの数は決められているのに、高齢者の数は増えていくのでミスマッチは絶対起きてくるでしょうから。中間層を支える機能としてサ高住は重要かもしれないですね。
    
いきいき:お仕事をされていて、うれしかったこと、つらかったことがあればお話しいただけますか。
    
秋野さん:私は比較的楽観的な性格なので、その状況の中では楽しく過ごせると思いますが、何かあるかなと改めて考えてみると、利用者さんのお宅にお伺いした際に、お客さんとして扱われなくなったらちょっとうれしいなと思います。
「ケアマネジャーがいないとサービスを受けられないでしょう」って勘違いされてる方も多いですが、実は制度上は自分で書類を作って市役所に持っていけば、サービスは受けられるんです。私を持ち上げてもらう必要も全くないですし、なので極端な話ですけど「いやいや、いつもお世話になっているあんたがいるから」って言われる位だったら「また来たの」位の方がこっちとしてはうれしいですよね。
大変な時期を乗り越えてこの便利で住みやすい日本を作ってきてくれた方々なので、もちろん私たちは尊敬の念や敬意を払いつつ対応しますけど、向こうから敬意を払っていただく必要はないので、普通に生活の中にちょっと入りこめた時のほうがうれしさを感じるかもしれないですね。
    
いきいき:あまり意識せずにお話してもらえる感じでしょうか。
    
秋野さん:そうですね、自然とお話ししてもらえてる時に、受け入れられてるんじゃないかなと思う事が多いです。言い方が悪いかもしれませんが、結局受け入れてもらったなと思うときが一番うれしいですね。
    
いきいき:つらかったことはありましたか?
    
秋野さん:担当していた方が亡くなったとか、あとは何かしら施設に入るとか長期入院等で支援が切れた時に、支援が切れた事ももちろんですけど、もうちょっと何かできたんじゃないかなとか後悔するのは何回経験しても減らないのかなと考えてましたね。
これで完璧と思ったら負けな仕事だと思っているので、私個人としては、やってるときは完璧だとは思わずに一生懸命やらせてもらってるつもりですが、利用者さんと合意の上でこうして行きましょうとなっても、実際高齢者の方の生活が大変になると、もうちょっと違う目線があったんじゃなかったかなと思う事は都度あります。それがもっと勉強しようとする動機づけになっているんだと思うんです。
    
いきいき:絶えず勉強が必要なんですね。
    
秋野さん:なかなかゴールは無いですよね。頂上のない山を登っている感じなんですね。でも登っているのがちょっと楽しいかもしれないですね。
それプラス、私たちは今もそうなんですけれど、諸先輩方におんぶに抱っこでいろいろお願いしたり、相談したりさせてもらっているんですけど、若い人たちがこの業界に入ってきたら、いずれ自分たちが先輩方の立場にならないといけないですが、20年後かもしれませんし、もっと先かもしれませんし、もしかしたらならないかもしれませんけど、いざそうなった時に教えてもらったことや経験させてもらった事を、フィードバックできるようにもっともっと力をつけないといけないですよね。
介護の制度が今で16年。この制度が長生きして、循環させていかないと、いつまでも諸先輩方が現役でバリバリやってくれているわけではないでしょうから、それに備えていく必要があるのかなと思いますね。
    
いきいき:今後どのように進んでいくでしょうか。
    
秋野さん:医療と違って介護はまだ若い制度なので、循環が起こってないのかもしれないのかもしれないですね。なのでこれから10年、20年経ったときに、ある程度循環できるシステムっていうのは今の内にやっておかないといけないですよね。諸先輩方から我々を経由して次の世代に、という流れを今のうちに作っておかないと後で気づいたときには手遅れになるのは困りますからね。
業界としては若い世代の底上げがないと先々大変ですから。
介護業界のアピールが足りないかもしれないですね。多分みんな優しすぎるかもしれないです。もう少しアピールがあってもいいのかもしれないですね。
    
いきいき:いきいき60+についてはなにかご意見とかありますか。
    
秋野さん:付帯サービス(併設サービス)がもっとしっかり掲載されているといいかもしれないですね。そうしたら、そこでの生活が想像しやすいかもしれませんね。私たちが理解できればご説明もしやすくなりますし。ここだったらヘルパーさんいらっしゃるから安心でしょ、とか病院がくっついてるんだ、とか。
    
いきいき:今も掲載している部分もありますが、よりわかりやすく、ということですね。
    
秋野さん:意外と高齢の方は外観よりも付帯サービスの方が気になってるかもしれませんね。後は金額との折り合い、場所でしょうね。もちろん見栄えもありますから写真も必要と思いますが、私たちも付き合いのあるところはわかっているのでいいんですけど。見たこともないところや、あまり関わりの無いところは私たちもわからないので掲載されていると助かります。
    
いきいき:では、最後になりますが、お休みはどんな風にお過ごしでしょうか?
    
秋野さん:子どもがいるので、休みは基本的に家族と過ごすことが多いですね。頻繁にどこかに旅行に行ってというよりも、市内をぐるぐる回ってる感じですね。
あと、体を動かすのが結構好きなほうなので、今も函館の社会人サッカーリーグに所属しています。他の会社のソフトバレーの練習に参加させてもらったり、介護職の方々が月に一回サンリフレで体を動かしてますので、それに参加したりしてます。
その他は結構本を読むのも好きなので、推理小説を家で読んだりしています。今なかなか時間もないので、少しずつですが、読み進めています。
    
いきいき:お忙しいですね。サッカーは学生のときからやられてるんですか?
    
秋野さん:いや社会人になってからですね。学生時代はいろんなものを少しずつですね。小学生のときは野球をやって、中学高校はバスケットをやっていたんですけど、高校が小樽商業っていう女子がすごく多くて男子が少ない学校だったんです。なので、部活を掛け持ちしていたんです。バスケット部がメインだけどちょっとサッカー手伝ったりとかしてましたので、そういった面では、ちょっとは経験あるといってもいいかも知れないですね。

何の仕事をしていても、理解しようとすることはやっぱり大事だとあらためて感じました。
秋野さんお忙しいところ長時間本当にありがとうございました。

秋野航太

テーオーケアサービス
管理者・主任介護支援専門員(社会福祉士)/

秋野航太

小樽生まれ、小樽育ち。現在テーオーケアサービスの管理者・主任介護支援専門員を務める。
学生時代に行っていた児童養護施設のボランティアがきっかけで、保育や福祉について学習する。その後、障がい者施設に勤めながらケアマネジャーの資格を取得し介護業界に入る。現在は、地域にお住まいの高齢者に対するケアマネジャーとして働く傍ら、介護業界の未来を考え、実地動向型研修等さまざまな活動に参加し、日々ご活躍中。

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