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インタビュー

高齢者の方にとっての理想と施設介護 後編

前回に引き続き波並さんに介護業界の現状などについてお話を伺いました。

いきいき:では、介護業界の現状や、もっとこうなったらいいなと思うこと等ありましたらお聞かせ願えますか?
波並さん:やっぱり一番思うところは介護業界全体で人材が不足している点ですね。 「あんじゅう」も含めて、この点に関して不安を抱いている事業所は少なくないと思いますよ。関連の方々と会っても、最近はその話しか出ない位です。施設数の増加も人材不足を加速させている要因でもあります。人材不足が解消されなければ、今後質の低下が懸念され、もちろんそれぞれの事業所で質の向上のために努力はすると思うんですが、それも限界があると思うんです。 なので、介護の業界に人が集めるためにはどうしたら良いかを国や道や市や教育機関、そして地域住民や私たちのような介護事業所がもっと一体となって考えていくべきだと思います。そして、“魅力的な職場”、“魅力的な仕事”にしていくために手と手を取り合って、様々な取り組みをしていかなければこれからの超高齢社会を支えていくことは出来ないと思っています。悲しいことですが、函館でも虐待事件などが起きています。この問題にしっかりと取り組んでいかなければ、これから先もっとこういったことが起こっていくんじゃないかなと懸念しております。
いきいき:具体的にどういうことをしていくと介護業界に人が集まってくると考えられますか?
波並さん:介護業界が”楽しくやりがいのあるところなんだよ。”という事を発信していく必要があると思うんです。 私が行っている取り組みの一つに「ケア☆カフェはこだて」というのがあります。 昨年の8月に実行委員数名で立ち上げ、現在運営しているんですが、今年度は3ヶ月に1回のペースで、平日の夜とか土曜日の午後を使って開催しています。 分野や職種の違いも関係なく、“コーヒーを飲みながら”、“ジャズの音楽を聴きながら”、”何かのテーマについて自由に語り合う”集いの場なんです。”何かについて学ぶ”ということだけが目的ではなくて、なかなか職場で話せない話や息抜きというか、だけどまったく違う業界ではなく、近い業界なのでなんとなく言っていることが分かるとか、あまり、こう・・・設定を決めることなく、そういう場を作ることによって楽しんでくれています。 終了後に懇親を深めるために飲み会みたいなのもつけて昨年から併せて6回行っています。 毎回40名~50名位の方、介護や医療の方々が参加して頂いて、会費も何も取りませんし、みんなカップとかペンを持参して、いわゆる手弁当でやってるんですけど、「また次いつあるんですか?」と楽しみにしてくれている方も多く、堅苦しくない、敷居が低い集いも必要なんじゃないかと感じています。 もっともっと何かを発散できる場や、繋がりがあると、助けてくれるとか、助言してくれるとか、そういうようなものを造っていくのも一つなんじゃないかなって思ってやっています。 この中には学生も来てくれるんです。就職の面接じゃなくて、もっともっと現役時代から実際に働いている人達と交流があって、こんなことなんだ、あんなことなんだって言うことを知っておく、そういう事もとても重要なんじゃないかなと思っています。 公的な機関から出来るアプローチもあると思うんですが、逆に我々現場から発信できるものもあって、そういうものを色々組み合わせていかないと、そんな簡単なことでは無いと思います。

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いきいき:当社で運営している「いきいき60+」についてどう思われますか?
波並さん:こういう情報を得る仕組はいくつかあると思うんですが、今サービス付高齢者住宅(以降 サ高住)が一番数多く出来ていて、これからの時代、サ高住が果たす役割はとても大きいと思うんですが、どういう所がどういうコンセプトでやっていて、どういう人が入居できて、どういう状態まで生活できるのか?というところが、不透明だと思います。 我々この業界にいる者でも、「なんかあそこに出来たらしいよ?」とか「今度ここにできるらしいよ?」という情報は入るんですが、それ以上のはっきりとした情報がわからない。 今後サ高住が地域の中で重要な役割を担っていく為には、もっともっとその辺の情報をオープンにして、選ぶ人が適切に判断できるような仕組みが無いと、今後大きなトラブルになりかねないと懸念しています。そういう意味ではこの「いきいき60+」が果たす役割は大きいんじゃないかなと思います。 あとはこれがいかに有効活用されるかをきちっと周知していくことが、とても重要だと思います。使い易いものであって欲しいなと思います。
いきいき:最後の質問になるんですけど、肩の力を抜いて頂いて、普段お休みの時など、どう過ごされていますか?
波並さん:えー、妻と2歳半の息子がおりまして、休みの日には色々な所に出掛けて、子供が楽しさも表現できるように なってきたし、大分わかるようになってきたんですね!違う場所にいくと、なんとなくわかって新鮮な目をして・・・という事を感じてきたんで、出来るだけ多くの場所に連れて行ってあげたいなと、そうやって子供と遊んでいるのが一番ですね。
いきいき:サッカーは教えたりしないんですか?
波並さん:まだ、ちょっとそこまでは!でも、男の子ですし必ずそこは(笑)少しずつサッカーボールを置いたりとか、仕掛けて行きます。まだいかんせんそこには至ってないですけどね。結構スルーされたり。
いきいき:では、会社が終われば出来るだけ早く帰ってお子様と遊ぶとかでしょうか。
波並さん:いや平日はそこまで早く帰れないので、子供は寝ている感じですね。 朝に少し会うくらいで。 その分週末は子供に全部時間を使いたいなと思っています。 逆に言うと平日は時間の中で自分の仕事をしなくちゃいけないですし、それ以外にこういった(前述のケアカフェ等の)地域づくりというか、ネットワークの為の時間に充てているのが現状で、でもこの部分が無いと自分の仕事も上手くいかないし、この福祉という仕事をしている意味がないような気がして、今のこの会社以外の時間はとても重要な時間だと思います。
いきいき:長時間のインタビューでしたが、ご回答ありがとう御座いました。
波並さん:ありがとうございました。

今後の介護業界にかける熱い想い、そして実際に行動に移す力を学ばせていただきました。 波並さん、お忙しい中ありがとうございました!

波並 孝

ケア☆カフェはこだて 実行委員長 株式会社あんじゅう 常務取締役
北斗市介護支援専門員協会 事務局長
ほくと市認知症の人と家族の会 理事
北斗市キャラバンメイトネットワーク 副代表他

波並 孝

株式会社あんじゅうにて、常務取締役として勤務。 函館にて生まれ、小さい頃から目指していた教職とサッカーに打ち込んでいたが、時代の流れから福祉関係に興味をもち、札幌の専門学校に通う。卒業後「老人介護支援センターももハウス」にて4年間勤務ののち、「あんじゅう」立ち上げの時にお声をいただき、現在に至る。在宅の経験を活かし経営と運営の両面にてご活躍中。

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