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インタビュー

知識や技術よりも大切なもの 前編

今回はライフプレステージ白ゆり美原で、施設長としてご活躍中の越尾さんにお話を伺いました。

いきいき:早速ですが、越尾さんの普段のお仕事をお伺いして宜しいでしょうか?
越尾さん:この白ゆり美原の施設は7つの事業所がある複合型施設なのですが、事業所としてはケアプランセンター、ヘルパーステーションと住宅型有料老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、定期巡回随時訪問型介護、訪問看護があります。この7つの事業所を現在実施しておりまして、そこの取り纏めをしており、特に力を入れているのは施設全体で協力して連携をするところと、おもてなしの心をもった対応ができる職員を育成していくという仕事です。
いきいき:すごく大きい建物なんですがこの施設を統括するというのは大変ですよね。
越尾さん:まだ施設長として経験が短いので、試行錯誤しながらですが、職員の働きやすい職場づくりをしています。最初は部署間でも管理する立場の職員同士、意見が合わなかったり、普段から会話の機会がない状況でしたが、今は朝と夕方に管理者会議というものを設けました。各事業所の今日やる予定のこと、その日にあったこと、関連しているお客様の情報のやり取りなど、管理者が集まって話し合いをするんです。例えばデイサービスで今日イベントがあるのでちょっと手が足りないという時に、他で空いている職員がちょっとした部分で手伝いに向かったり、手伝う手伝わないに関らず、今日はそういったイベントがあることをきちんと施設内の事業所に伝える、これによってお客さんやご家族が来ても、どこで何のイベントをしているかわかるんです、わからないと失礼な対応になってしまうこともありますので・・・
手伝ってもらった後も、管理者や職員から手伝ってくれた事業所へ行って「どうもありがとう」「助かりました」を伝えると、会話にもなりますし、これがきっかけで良い関係づくりにもなります。(あたりまえのことなのですが、意識していないと意外と出来ていないです・・・)
また実際に手伝いに行っても何の仕事を手伝えばいいのかわからない。そこで手伝ってもらう側の職員にも、受け入れ態勢を作ってなにをするかを伝える、もしくは担当をきちんと付けて、何をやるかがはっきりわかるようにすることを取り組んでいます。今はすべての事業所が良い感じに協力体制が整っています。
いきいき:いろいろイベントをなされているんですね。前々回インタビューさせていただいた「あんじゅう」さんでもインタビューのときにちょうど夏祭りを行われていましたが、これだけ大きい施設ですとにぎやかなイベントになりそうですね。
越尾さん:そうですね。夏祭りを行ったり、函館市の住宅都市公社で花キューピッド事業というのを行っているですが、そちらから花の苗を頂いて、花壇や野菜を作ったりもしています、他にはお花見に行ったり、七夕に近くの幼稚園からお子さんに来ていただき一緒に祝ったり、クリスマスとか普段から行っています。もともと当施設は地域に根ざした施設を目指しているので、地域の皆さんと一緒に何かをやりたくて、お祭りに呼びかけしたり、喫茶コーナーを手伝っていただいたり、避難訓練に協力していただいたりなどしており、最近は周知もされてきたのか、沢山の方々が来てくれていすね。

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いきいき:それでは、通常の業務以外に居宅連協(居宅介護支援事業連絡協議会)の副会長を勤められているとのことですが、具体的にどういった活動をされているのでしょうか?
越尾さん:居宅連協の活動としては、研修会の企画や司会などをさせていただいています。あとは介護保険を勧める中で、ケアマネジャー自身も、新人のケアマネジャーがどう進めたらよいか解らなくて困って聞きにきてくれることもありますね。それに対して「一緒に調べたり、うちの事業所ではこういうことをやっているよ」と伝えたりしています。当ケアプランセンターには「7人ケアマネジャーがいて、それぞれベテランから新人までいますが、その人達が、色々なケースにあたっています。私も独りだけの情報だと足りないことは沢山ありますし、色々な人から情報を得て、それを伝えたりします。居宅連協の会長もすごく人柄が良い方なので、ざっくばらんに聞いても教えてくれる感じですね。
いきいき:この業界で働き始めたきっかけを教えていただけますか?
越尾さん:私には兄弟がいるんですけど、弟が病弱だったもので、小さい頃におばあちゃんに預けられておりまして、それで高齢者の方とのお話が好きだということと、元々ボランティアにも若い頃から参加していたので、そういったところで色々な方から「ありがとう」と言われたときに、「特別すごいことも出来ない自分でも役に立てることがあったんだなぁ」と思ったのがきっかけです。
いきいき:学生生活を卒業してすぐにこういった職に?
越尾さん:そうですね。私は生まれが神戸なのですが、小樽で育ちまして、専門学校に通っている当時、隣町の余市町の社会福祉協議会での応募があり、そちらでお世話になりました。
いきいき:余市町では、どのようなお仕事をされておりましたか。
越尾さん:余市町社会福祉協議会のときは、ボランティア団体が沢山がありまして、それをまとめる「ボランティア団体連絡会」というのがありまして、その事務局などをやっていました。「赤い羽根共同募金」、「生活福祉資金」といって福祉のお金を貸したりとか、「福祉の総合相談窓口」とか、多くの研修に行かせてもらって相談を受ける業務にも就かせてもらうなどしました。
いきいき:福祉を総合的にサポートするようなところですね。
越尾さん:そうですね、現在の介護保険制度が始まる前の頃なのですが、総合相談窓口というのを設立するということになって、色々地方から新人からベテランまで相談員となる職員を募って、育成してきましょうという内容の中、勉強させていただきました。
いきいき:どういったことで悩んでいるのかご自身の中で理解した状態で携わることができるというのは強いメリットですね。そういう所で勤めていて、やはり「直接お客様に接するようなお仕事に」という感じでしょうか。
越尾さん:そうですね。小さな町ですので職員も4名位しかおらず、そんな中ヘルパーステーションや福祉用具貸与事業所も行っていたので、直接利用者と関わる所もありましたし、それ以外に民生委員さんや、ボランティアさんとも色々関わり合ったり、町内にある施設との関わりなど、すごく広い分野に目線を広めることができたんです。社会福祉協議会にいる時、それをすごく感じました。紹介先がこの人だったらこういうとこあったなぁっていう、最初の相談する入口としてとても勉強になりました。
いきいき:それからずっと介護業界で勤められているのですか。
越尾さん:はい、その間にも10年間「ケアステーションこうじゅ」という所で勤務させていただき、平成7年から仕事をしていますので全部で(平成26年まで)19年間ですかね。
いきいき:ベテランさんですね!
越尾さん:ベテランといっても、正直どんどん新しく変わっていますし、まだまだ勉強しなければいけないことは沢山ありますので、二十年近く働いていますけど、いつまで経ってもベテランと感じてはいないです。
いきいき:函館に住んでみていかがですか。
越尾さん:最初の頃は、「どこの学校を卒業したの?」とかすごく聞かれて「いや実は小樽なんです。」っていうと「あぁそうなんだ・・・」って流れちゃう感じだったのですけど、付き合っていくと皆さんすごく温かくて、居心地がいいです。小樽にいても良かったのですけど、周りの環境が過ごしやすすぎて、そのまま小樽にいたら甘えて自分で頑張らなかったかなぁと、やっぱりこちらに来て心機一転じゃないですけど、改めて一からやりたいということで、最初はなかなか大変だったことや、すぐに入り込めなかったり、「外から来たからどうしようかな。」という気持ちも自分の中にあって、でもやっていく中ですごく良い仲間に巡り合えて、今は本当に皆さんに助けてもらってますね。
いきいき:それでは、介護業界で気になることや、今後の介護業界が良くなるにはどうしたらよいか?などお聞かせください。
越尾さん:そうですね、恐らく今はどこの施設、事業所においても人手不足という問題がありまして、実際じゃあ本当に人がいないか、というといるんですよ。いるのですけども、募集があちこち多くて、選ぶ側が選び放題というところで、受ける側も「どうせ辞めるんだから」とか、あとは先程も話にありましたが、勤務先の受け入れ態勢が問題点なのかなと最近は思っています。
当施設は挨拶に力を入れていく会社でして、おもてなしの四大要素というのがあります。「挨拶」「身だしなみ」「言葉使い」「笑顔」っていうものなのですけれど、この4つが基盤にあって、いくら介護の技術や知識があっても「笑顔が無い」とか、「身だしなみがだらしない」、「言葉遣いが上から目線」ということになると、「この人に介護はして欲しくない」と思うんですよ。
その部分を徹底して行う点と、実際に新人さんが働きに来ても、その人達を受け入れてあげられる施設が無ければ、年代もバラバラ、うちも20歳位から70代まで働いておりますので、それぞれの年代の良い所、悪い所ってあると思うんです。会社としてそれらをちゃんと活かして、それぞれの悪い所をフォローしてという形にもっていかなければいけない。やっぱり受け入れる側の職員が長く働いているからといって、上から目線になっていたら駄目だと思います。 ある程度、年配にあたる年代の方々は職場で仕事を覚えてきた中に、他の先輩などの知識や技術など良いところを盗んで覚えるのが普通の時代に育っていた方が多かったと思います。 でも、今の若い人は、盗むという感覚の無い環境で育っている方も多く、教えてもらうのが当然なことも・・・。もちろん自分で勉強する人や、人の技術などを盗むくらいの気持ちの方もいるのでしょうけど、そんな人は中々この業界には入ってこない状況だと感じています。
寧ろ優しすぎて気が弱かったり、どこかビクビクしていたり、人間関係が上手くいかなかったり、というところが沢山あるので、そういう人達を受け入れて育てられるような、職場にしたいなと。自分のできなかったことを思い出して同じ目線で話しを伝えて教えられるというような。最近では大工さんの世界でも、先輩が後ろから手をやって、「いいか、釘を打つ時は手で押さえて、上から叩くんだぞ」ということをやらないと若い人は育たない状況になっているという話を聞いたこともあります。私たちの業界でも同様かなと共感させたれました。ただ、その後もずっとそのままじゃ駄目だよと、だんだんステップアップしていくんだよ、という所で気をつけていけるようにしていきたいです。

次回は引き続き越尾さんに、お仕事上のエピソードなどについてお伺いしたいと思います。

越尾 賢

居宅介護支援事業所連絡協議会 副会長 ライフプレステージ白ゆり美原 施設長

越尾 賢

神戸に生まれ、小樽にて学生生活を過ごす。卒業後、余市町の社会福祉協議会などに勤めるなど様々な経験を経て函館へ。現在はライフプレステージ白ゆり美原の施設長として勤務。 釣りや山菜採り、TVゲームなど多彩な趣味をお持ちの他、石川さんや波並さんと同じく「蝦夷しか会」のメンバーとしてアクティブな休日を過ごされているご様子。函館に来られて間もなく苦労もある中、介護業界のために日々ご活躍中。

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