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インタビュー

ここに相談して良かったと思えるように(前編)

今回は地域包括支援センターあさひセンター長の有川さんにお話を伺いました。

いきいき:有川さんの普段のお仕事をお聞かせいただけますが?
有川さん:地域包括支援センターあさひで、センター長として勤務しています。地域包括センターでは6法人が函館市から業務を委託されて取り組んでいて、あさひでも委託を受けています。
実際に行っている業務は西部地区の65歳以上の高齢者の方の相談窓口を開設して、受けた相談に対して適宜対応するという内容です。様々な相談を受けますが、特に多いのは介護福祉関係の相談です。「足腰が少し痛くなってきて買物に行くのが大変なんだけど」という相談や、住環境の相談もそうです。西部地区の古いお家ですと、そもそも自宅にお風呂が無いことが多いので「これまでは自分で銭湯や温泉に通っていたけど、足腰が立たなくなってきたから一人で入るのも不安だし、お風呂に入る機会が減ってきた。どうしたら良いだろう。」というような、日常生活の相談を受けることが多いです。中には介護とは全然関係のない相談もあります。例えば、「最近物忘れをしてきて、金銭管理を自分でするのも大変になってきた。」という相談や、「あの人最近姿を見ないけれど、どうしてるんだろう」ということを近所の人や地域の人から相談を受けます。ご本人やご家族だけではなくいろいろな所から相談を受けますが、それらを私達でまず受け止めて、相談者に”ここに相談して本当に助かった”と思ってもらえるように活動しています。それを私達は”総合相談”と呼んでいますけれど、そこから様々な対応をし、社会資源に結び付けて、他の関係機関に繋げていくように活動しています。もちろん私達でできるものは私達で対処します。それが先ず一つの業務です。
いきいき:総合相談の他にはどのような業務があるのですか?
有川さん:他には”地域での各種事業”があります。これは、地域をより良いものにして行く、地域の活性化に繋がる事業をやらせてもらっています。ここ、あさひでは、“健康づくり教室”などを行っています。各町ごとに町会さんにご協力いただいて、町会館を借りて1クール12回で開催しています。”健康”に対して物忘れ、転倒予防、下肢筋力の向上、口腔機能等の様々なテーマで参加されている方々が意欲的に取り組んでもらえるように意識して開催しています。1クール終えてその方々の生活習慣の中に”健康”というテーマが身について、その後も生活(ライフサイクル)の中に組み込まれていけばもうしめたものです。その他、介護をしている家族を対象に、家族介護教室を年に1回開催していて、これも介護者同士が繋がることになると思います。町会、民生委員など地域の福祉関係者と言われる方々からも、最初は地域包括支援センターの名前は全然周知されていなくて、”包括センターってなに?”という反応でしたけれど、最近では町会や民生委員の方からも名指しで依頼や相談が来るようになって、結構地域の中には包括センターの役割が周知されてきたのかなと受け止めています。
あと業務というと”地域支援事業”があります。その地域支援事業は”包括的支援事業”と”任意事業”、”介護養護事業”の3つに分かれているんです。その地域支援事業の他に”予防、予防給付”があって、これが介護保険の要支援の1、2の方を担当するというものです。ですから包括支援センターが、介護予防支援事業所としても指定を受ける形になるので、要支援の方も担当するという業務もありますし、地域支援事業の業務もあります。大きくはこの2つですね。要支援50%、地域支援50%となるんです。さっき言いました総合相談や各種事業というのは地域支援事業の中の細かく分かれた部分になるんですね。
あと、「見守りネットワーク事業」というのを市から受託してまして、今一人暮らしの高齢者の孤独死などが社会的な問題になってきていますよね。道内でも孤独死が何件か続いたことで、函館市としても高齢者の孤独死をできるだけゼロに近づけようと、まずは高齢者の独り暮らしの方を対象に包括支援センターから訪問して一人での生活の様子や状況を実態把握するところから始めようとしています。「やっぱりこの方は一人では危ない」と思うような事があれば包括支援センターからも介護保険のサービスに繋げるとか、家族に連絡を取って、在宅での生活のあり方を一緒に考えたりして、みまもり体制を作っていくという事業なんです。これは市内全域6包括で行っていて、当時の65歳以上の独居高齢者のお宅は一通り廻り終えたんですけれど、その後さらに独居の方だけではなくても孤独死があったので、やはり世帯であっても二人ともあやしい状況であれば孤独死に陥る可能性もあるのでその様な世帯を廻っている状況です。

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いきいき:お仕事以外でこの介護業界との繋がりや活動はなにかありますか。
    
有川さん:研修会などはよく開催の案内がくるのでタイミングが会うと極力出席するようにしています。その他の活動としては、包括支援センターだけではなく、旭町全体として夏祭りに参加します。町会としても最近若手がいなくなってきて餅をつくのが大変だから手伝いにきてもらえないかと言われて、年末になると餅つきなどもやります。あとは、町会との関係を繋げていくために旭町の新年会に参加したり、地域との繋がりを切らさないようにして活動をしているんです。業務となるのかどうかわかりませんが、一応そんなことをやってます。
    
いきいき:どうして介護業界で働くことになったのですか。
    
有川さん:当時私は自動車販売店で働いていたのですが、障がい者の相談窓口を行っている大学時代の友人から「ボランティアでもやってみないか?」って誘いがあったんです。
最初は福祉のことは何も知らなかったし興味もなかったんですが、知的障害のある子供の余暇活動に付き合うということがボランティアであって。それぐらい簡単にできるよっていう軽い返事でやることになったんですが、いざやってみたら最初の頃は僕になついてくれた部分があって、「簡単でしょ」みたいなやり取りだったんですけど、ある日余暇活動に行ったら、その子が大泣きしてパニックを起こしたんです。その時に僕はどのように対処したらいいのか分からなくてアタフタしたんです。結局一緒に来てくれていた親御さんがなだめたんですけれど、何かそれから、その子と僕との関係がギクシャクして”あの時どうしたら良かったんだろうな”と気にするようになって、その友人に話をしたら、「性格的にというか、人間的に人を上手く和らげたり、接するのが多分向いてるんだとは思うけど、専門性がない、もしやる気があるんだったら、もっと勉強してみろ」って言われたんです。それがキッカケでこの介護業界に入ることになったんです。
でもすぐに福祉業界に入ったのではなくて、大学を卒業して教員免許も持っていて、福祉の勉強もして介護福祉士の資格もとれたので、士別の東の高校で介護福祉士の養成をする高校から数学の先生として来てくれないか、と言われて臨時の教員として1年間赴任したんです。そこで数学を教えたり4年制の定時制だったので4年生の生徒に福祉のこととかを話す機会があったんです。教えるのが嫌ではなかったんですけど自分に向いているかどうかと思ったら、自分の本当の気持ちは専門職として人と話をしたい、その部分が教員とはまたちょっと違う気がしたので、福祉の業界にやっぱり行こうと思ってまた函館に戻って福祉業界に入ったのが始まりなんです。
その時はデイサービスとヘルパーをやっていた事業所で相談員をやって、その後ヘルパーステーションのサービス提供責任者をやらせてもらって、社会福祉士の受験資格も期間が満たされたので受験して合格したことによってこの包括支援センターで働かせてもらうことができた。というわけなんです。
いきいき:大きな方向転換ですよね。
    
有川さん:自動車販売の場合、”利益の追求”の世界ですよね、包括センターの場合ももちろん赤字になってはこまるんですけど、利益を追求できる場所ではないですよね。やはり利用者さんの自己決定に基づいて、例えば利用者さんがあっちの事業所に通いたいとなったらそのようにしなければいけないですし、利用者さんの意思を尊重することが大事ですから、どちらかというとこちらの方が僕の考えには合っているのかなと思うんです。利益を追求するとなると多分そこまで追求できないと思うんです。ですから自動車販売店で働き続けていると成績はわるかったんじゃないかと思いますよ。

次回は引き続き有川さんに、業界で今、気になることなどをお伺いしたいと思います。

有川祐樹

社会福祉法人心侑会 地域包括支援センターあさひ
センター長・社会福祉士・精神保健福祉士/

有川祐樹

九州生まれ、憧れの地北海道の大学に進学し定住。自動車販売ディーラーに就職するが、友人の誘いでボランティア活動を始める。その時の経験が介護福祉業界への転身のキッカケとなり、相談員などの職種を経て現在地域包括支援センターあさひのセンター長を務める。仕事終わりや休日はオリジナル料理に腕を振るい、「仕事も家事も自分の好きなことをやらせてもらって満足」とおっしゃる有川さん。プラス思考で地域の活性化と介護福祉への取り組みに日々ご活躍中。

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