インタビュー
変わり行く高齢者のニーズ
日本の福祉・介護系の住宅は介護政策の変遷により、多種多様で利用者には非常に判り難くい状況です。近年、新たに「サービス付き高齢者住宅(以下サ高住)」というジャンルもでき、「いきいき60+」はわかり易さを追求した結果、サ高住専用のサイトとなりました。
今回は、前回に引き続き松野陽さんにサ高住をはじめとした「高齢者の住宅」についてお聞きしました。
――高齢者のニーズ
昔からの介護系住宅といえば「特別養護老人ホーム」があります。
私が介護職として働き始めた当初、特別養護老人ホームでの勤務でした。当時の特別養護老人ホームは、病院の延長のような感じで多床室での相部屋が中心でした。相部屋の方が「寂しくない」ので、多床室の方が良いとおっしゃる方もいらっしゃいました。
ところが昨今では、個人のスペースや時間を重視する方が多くなってきており、多床室から個室へとニーズに変化が見られるようになりました。
私が在宅の介護もするようになった時に感じたのは、住まいに対してこだわりを持つ方が非常に多く「自分でここに行きたい」「自分でこうしたい」という気持ちを強くお持ちの方が多いということです。
このことから、在宅で頑張られている方が別の住まいを考えた時に、相部屋よりもプライバシーが確保された“住まい”を求めている事がわかります。
こういった利用者さんと多床室を好まれる利用者さんとの2極化により、現在のニーズは、ますます多様化しています。
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このニーズの変化の理由については「最近の高齢者は非常に元気な方が多い」ということが挙げられると思います。そうなってくると、今の高齢者の方の希望を叶える為には介護施設だけでは足りず、住宅として造られた「サ高住」という選択肢が増えたことは歓迎すべきことと思います。
また、在宅で介護を頑張っていらっしゃる方の中には、どうしても精神的なストレスを抱えてしまう方も多いので、無理せず住宅として暮らしつつ、必要なときだけ介護サービスを利用できるという事も良い点でしょう。
――課題と対応
最近は新聞などで広告を見る機会も増え、サ高住について一般の方の認知度は上がってきていると思いますが、入居の流れとしては主に地域包括支援センター、ケアマネジャー、民生委員等へ相談して、という方が多いのが現状です。
介護系の住まいとしては様々な施設・住宅があり、それぞれに特徴があり、また重複部分もあります。そのために、相談者の方へ提案するのは非常に難しいことで、どのケアマネジャーさんも難儀するところと思います。私の所では、フローチャート(図式化)したものを用意して、自分達にも相談者さんにもわかりやすくなるような工夫をしています。
相談に来られる方へお願いしたいことは、最終的に入居される方が決めることですから、一番重要な料金のことなども含めてお気軽に相談していただき、また出来る限り御自身でも施設を見てきていただけたらと思います。人によって重要とする基準はそれぞれで、「施設」が良くて入居を決める方、「人」が良くて入居を決める方、「サービス」が良くて決められる方、本当に千差万別で、行ってみない事には判らない部分がたくさんあります。
利用者の目がどんどん肥えていく中で今後サ高住に求められるのは、やはり基本となる「介護サービスの質」ではないかと考えています。ただし、これはサ高住だけではない別の問題も抱えています。 現在、介護職の不足が深刻化してきていることです。これは、以前都市部での問題と考えられていたものでしたが、近年は地方都市でも顕著になってきており、介護職員の方の平均年齢も年々上昇傾向にあります。そういった中で、どうやって「質」の担保をするのか。という課題が出てきているようです。
—複雑化していく介護業界ですが、ケアマネジャーさんの努力によって、
私たちの安心が守られているのですね。
松野さん、お忙しい中ありがとうございました!
NPO法人 ケアマネジャーネットワーク函館 会長 社会福祉法人函館厚生院 高齢者あんしん相談窓口 函館市地域包括支援センター厚生院 所長・主任介護支援専門員
松野 陽
函館生まれ。函館育ち。生粋の函館人で、高校卒業後は介護系専門学校へ進学し介護職へ。平成4年、社会福祉法人函館厚生院 特別養護老人ホーム「函館百楽園」の立ち上げに関わり、以後、厚生院にて介護職の幅を広げる。特別養護老人ホーム、デイサービス、居宅介護支援事業所、老人介護支援センター、認知症対応型デイサービスに勤務。函館市が高齢者の相談窓口として「地域包括支援センター」を設置した平成18年、東央部地区として厚生院が窓口となり、経験を買われ異動。なかなか自由な時間も取れない中、休日は渓流釣りなどで息抜きも。高齢者支援の最前線にて日々、介護支援専門員として活躍中。
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